ミュージカル「エリザベート」自由を求めるシシィに共感!あらすじ・魅力を紹介
2022年10月9日(日)より、東京・帝国劇場でミュージカル「エリザベート」が上演されています。
孤独で美しいオーストリア皇后エリザベートの生涯を元にして作られたこのミュージカルは、自由を求めて生きるエリザベート、そんな彼女を愛する黄泉の帝王・トートの切なく危うい愛が観客の心をうっとりと酔わせる作品です。
今回は、ミュージカル「エリザベート」のあらすじや魅力を詳しく紹介します!
※出典 トップ画像はアデランスのプレスリリースより
■「エリザベート」のあらすじ
◆1幕
124年前の今日9月10日、皇妃エリザベートがジュネーブで亡くなりました🤍
一世紀以上も後に、遠く日本でこれほど愛されるようになったことを、シシィ本人も草葉の陰で喜んでくれてるといいなあ~😄
📍シシィ博物館(ウィーン) @sisi_museum
©ÖW/ Cross media Redaktion pic.twitter.com/DckHDPpQFf
— オーストリア政府観光局 (@ANTO_Tokyo) September 10, 2022
出典:オーストリア政府観光局Twitterアカウント@ANTO_Tokyo6
1898年、オーストリア皇后のエリザベートが旅行先のスイス・ジュネーヴで暗殺されました。
犯人であるルイジ・ルキーニは、皇后の死から100年経ってからも黄泉の国で裁判に掛けられています。
裁判官にエリザベート暗殺の動機を聞かれ、「動機は愛。彼女がの望んだことだ!」と不可解な供述をするルキーニ。
彼は証人としてエリザベートと共に生きたハプスブルク帝国の亡霊を呼び覚まし、エリザベートの生涯、そして彼女を愛した「死の概念」であるトートとの物語を語り始めます。
出典:エリザベート役・愛希れいかInstagramアカウント@manakireika_official
ドイツ南部の小国・バイエルン王国公爵の次女として生まれたエリザベート(シシィ)は、宮廷とは無縁の奔放な生活を送るおてんば娘。
姉がオーストリア皇帝・フランツ・ヨーゼフ1世とのお見合いの準備を進めるなか、木登りしていたシシィは誤って木から落ちてしまい、意識を失います。
生死をさまようシシィの元に現れたのは、「死の概念」であり人間の魂を奪うトート。
彼は美しい少女のシシィに一目惚れし、彼女に愛される日が来るまで、シシィを生かしておくことにします。
シシィは目を覚まし、美しく中性的な青年が自分を助けてくれたことを感じるのでした。
1853年、オーストリアの領地バート・イシュルで、フランツ・ヨーゼフとシシィの姉のお見合いが決行されました。
ところがフランツが選んだのは、姉ではなくシシィ。
天真爛漫な彼女に一目惚れしたフランツはシシィに求婚し、彼女もフランツの愛を受け入れます。
翌年シシィはフランツと結婚し、オーストリア帝国の皇后エリザベートに。
しかし二人の結婚式は、トートが影の司祭を務め、不穏な雰囲気はまるでハプスブルク帝国終演の始まりを予言しているようでした。
皇后としての生活は、エリザベートが想像していた以上に堅苦しく厳格なものでした。
フランツの母ゾフィーによる厳しい皇后教育と宮廷の人々からの好奇の目に耐えられなくなったエリザベートはフランツに助けを求めますが、フランツは「君のためになることだ」と、母親の方針に賛同します。
宮廷で見方が居ないことを悟ったエリザベートは、「私の命は私だけのもの」と、王室で飼いならされた言いなりの皇后になることを拒否します。
やがて皇帝夫婦には子供が生まれますが、子育てと教育の権利をゾフィーに奪われ、それでもなお母親への支持を貫くフランツにエリザベートは失望。
自分か母親、どちらかを選ぶよう、最終通告を夫に言い渡します。
次々に領地を失い、オーストリア帝国は国際的に孤立していきますが、やがてエリザベートは自分の美貌が武器になることに気づき、その美しさはヨーロッパ中に影響力を与えるようになりました。
フランツはついに母親ではなく妻を選び許しを請うと、彼の前に美しく着飾ったエリザベートが現れます。
「陛下とともに歩んでまいります。ただし私の命は私だけのもの」と高らかに勝利を宣言し、苦悩しながらも美しく輝くエリザベートの様子を、トートがずっと陰から見ていたのでした。
◆2幕
出典:エリザベート役・花總まりInstagramアカウント@hanafusamari_official
ハンガリーのブダペストでは、オーストリア・ハンガリー帝国の国王に就いたフランツ・ヨーゼフの祝典が開かれていました。。
国王の隣に立つ美しいエリザベートは国民に歓迎されますが、ルキーニは「皇后が群衆にとって好意的に見えるのはキッチュ(まがいもの)だ」と語ります。
姑ゾフィーとの戦いに勝利したエリザベートは、息子ルドルフに自由に学ぶ環境を与えますが、反対に彼女自らが自由を望むようになり、宮廷を離れて独自の奉仕活動や放浪の旅に出かけてしまいます。
母親に取り残されて寂しい少年時代を過ごしたルドルフに近づいたのは、トートでした。
彼はルドルフの「友達」だと言い、ルドルフもやがてトートが「死」の存在であることを知りながら、惹かれるようになります。
エリザベートが介入することで帝国の危機を感じたゾフィーは、フランツからエリザベートを引き離すため、フランツに愛人を用意することに。
夫の裏切りに絶望したエリザベートは、宮廷を離れて従者を連れて流浪の旅に出てしまいました。
ゾフィー亡き後、オーストリアの民主主義運動が一層高まります。
青年ルドルフはフランツの帝国権威主義的な考え方では国が崩壊してしまうと恐れ、やがて父と対立。
宮廷で孤立してしまったルドルフは旅から帰ったエリザベートに父への口添えを頼みますが、宮廷生活を断ち切ったエリザベートは息子の願いを受け入れませんでした。
生きる望みを失ったルドルフの元に、トートがやってきて・・・。
刻一刻と、エリザベートとオーストリア・ハプスブルク帝国に、死の影が近づいていくのでした。
■「エリザベート」の主な登場人物
出典:エリザベート役・花總まりInstagramアカウント@hanafusamari_official
◆エリザベート
ドイツ小国・バイエルン王国の公爵次女。愛称はシシィ。
奔放に生きる父の影響で、乗馬や詩を好む自由な少女として育つ。
フランツ・ヨーゼフに見初められ、オーストリア・ハプスブルク帝国の皇后になる。
幼いころに助けられたトートの存在を感じ、ときには彼に抗い、ときには彼に心のよりどころを求めながら自分らしい生き方を探す。
美容のために過酷なダイエットや入浴を欠かさない。
2022年公演キャスト(敬称略):花總まり、愛希れいか
◆トート
死の概念を擬人化した存在。シシィやルドルフが死の危機に瀕したときや、死に憧れたり近づこうとしたりするときに現れる。
少女のシシィに一目惚れし、彼女が自分を求めるようになるまで生かしておく。
中世的な美しい容姿で、人々を死へといざなう黄泉の帝王。
2022年公演キャスト(敬称略):井上芳雄、古川雄大、山崎育三郎
◆フランツ・ヨーゼフ
オーストリア・ハプスブルク帝国の皇帝。エリザベートの夫。
お見合いの席でたまたま出会ったシシィに一目惚れし、彼女の奔放さに惹かれる。
シシィのことを愛しているが、皇帝としての義務や母からの厳しい教えを全うするためにシシィの自由を奪うこともあり、それを自覚している。
2022年公演キャスト(敬称略):田代万里生、佐藤隆紀紀
◆ルドルフ
オーストリア・ハプスブルク帝国の皇太子。エリザベートとフランツの息子。
幼少期は祖母ゾフィーに育てられ、軍人としての肉体訓練を受けて育ったが、エリザベートの介入により自由な環境で学べるようになった。
しかし母が常に居ないことで孤独を募らせ、次第に死に憧れを抱く。
2022年公演キャスト(敬称略):甲斐翔真、立石俊樹
◆ゾフィー
オーストリア・ハプスブルク帝国の元皇太后であり、フランツの母親。
君主制を保持し、フランツに厳格な皇帝になるよう言い聞かせ、エリザベートにも伝統を重んじた厳しい皇后教育をする。
「宮廷でただ一人の男」と揶揄される精力的な人物。
2022年公演キャスト(敬称略):剣幸、涼風真世、香寿たつき
◆ルイジ・ルキーニ
エリザベート暗殺事件の犯人。
王族を恨んでいるイタリア人の無政府主義者。
狂言回しの役割を担っており、エリザベートのトートの愛の物語を語っていく。
2022年公演キャスト(敬称略):黒羽麻璃央、上山竜二
■【魅力①】死の概念に愛された女性の「自立」がテーマ
出典:東宝演劇部 公式YouTubeチャンネル「TohoChannel」
ハプスブルク帝国の話が出てきたり、死の概念の存在が絡んできたり、「エリザベート」のストーリーは現代の私たちには非現実的に見える部分もあるかもしれません。
しかしこの作品は、エリザベートという1人の女性が自立していく様をテーマにしているという点において、多くの人の共感を集めています。
皇后という重圧のかかる立場に置かれたエリザベートが、死に抗いながらも自分の命は自分だけのものであると懸命に生きる姿は、現代の女性の心にも響くのではないでしょうか。
劇中ナンバーの中でも人気の高い「私だけに」は、エリザベートが自分らしい生き方を求めて歌うソロナンバーです。
家庭や職場のなかで自分がどのように生きたいのか、自由を求めるエリザベートの姿を見ていると考えさせられてしまいます。
■【魅力②】宝塚版、ウィーン版を折衷させた東宝版
出典:エリザベート役・花總まりInstagramアカウント@hanafusamari_official
ミュージカル「エリザベート」は、1992年のウィーン版公演から始まりました。
やがてヨーロッパやアジアで翻訳公演が上演されるようになり、日本では1996年に宝塚歌劇団による宝塚版「エリザベート」として「エリザベート -愛と死の輪舞-」が上演され、人気を博します。
ウィーン版はエリザベートが主役として描かれていますが、宝塚版ではトートが主役となり、エリザベートを愛する黄泉の帝王の切ないラブストーリーが色濃く描かれているのが特徴です。
出典:東宝演劇部 公式YouTubeチャンネル「TohoChannel」
そして今回紹介する東宝版「エリザベート」は、ウィーン版をベースにしつつ、「私が踊るとき」、「夢とうつつの狭間に」の日本オリジナル楽曲を加えた作品となっています。
ウィーン版と同じくエリザベートを主役にしており、歴史的背景や話の展開がわかりやすくなっているのが特徴です。
東宝版「エリザベート」は2000年に初上演し、2020年には上演20周年の記念公演を行なう予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大により公演はすべて休止に。
2022年公演では待望の再演となり、2020年公演のキャスティングのまま公演を行っています。
■【魅力③】キャストの違い、役の違いが楽しめるリピート推奨の作品
出典:エリザベート役・愛希れいかInstagramアカウント@manakireika_official
東宝版が20年もの歴史を持っていること、宝塚版も「ベルサイユのばら」と同じくらい劇団の代表作として親しまれていることから、これまで多くの俳優が「エリザベート」の登場人物を演じてきました。
2022年公演でエリザベート役を演じる花總まりさんと愛希れいかさんは宝塚歌劇団出身の女優さんなのですが、宝塚在団時代にも宝塚版の「エリザベート -愛と死の輪舞-」において同じエリザベート役を演じています。
またトート役の井上芳雄さんは、東宝版の初演から2006年公演までルドルフ役を演じていました。
劇中ナンバー「闇が広がる」でデュエットするルドルフとトートを両方演じてきたという経歴には、注目せざるを得ません。
2022年公演でトート役としてデビューした山崎育三郎さんも、2015年から2019年にかけては狂言回しのルキーニ役を演じていました。
同じキャストで演出や役の違いを楽しめるという点も、「エリザベート」ファンにとっては作品をリピートしたくなるおすすめポイントとなっています。
■今後の上演予定
出典:エリザベート役・花總まりInstagramアカウント@hanafusamari_official
【東京】・・・10月9日(日)~11月27日(日)/帝国劇場
【愛知】・・・12月5日(月)~12月21日(水)/御園座
【大阪】・・・12月29日(木)~2023年1月3日(火)/梅田芸術劇場メインホール
【福岡】・・・2023年1月11日(水)~1月31日(火)/博多座
■まとめ
ミュージカル「エリザベート」について、あらすじと作品の魅力を詳しく紹介しました。
家庭や仕事に追われる女性たちからは、特にファンが多い人気のミュージカルです。
エリザベートの美しく芯の強い生き様や彼女を愛するトートの存在は、日常の疲れを癒やしてくれるかもしれません。
上演20周年を迎えた東宝版「エリザベート」を、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか?
ミュージカル、演劇鑑賞が大好きなハピエルライターによる記事です。
2022年よりエンタメハピエルの記事を執筆しています。
劇団四季、宝塚歌劇を時々見に行っています。
関東在住ライター、関西在住ライターがリモートワークで執筆しています