劇団四季「ゴースト&レディ」の原作は?漫画・ミュージカルの見どころを紹介

劇団四季ゴースト&レディ
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2024年5月6日から、東京のJR東日本四季劇場【秋】にて開催中の劇団四季の最新ミュージカル「ゴースト&レディ」。
バケモノの子」に次ぐ劇団四季オリジナルのミュージカルで、原作は歴史とロマンスを織り交ぜた魅力的な漫画「黒博物館 ゴーストアンドレディ」です。

皆さんは、「黒博物館 ゴーストアンドレディ」を読んだことがありますか?
今回は原作の魅力とミュージカルの注目すべきポイントを紹介していきます!

※画像 劇団四季公式ホームページより

■漫画「黒博物館 ゴーストアンドレディ」とは

「黒博物館 ゴーストアンドレディ」は、漫画雑誌「モーニング」に連載されていた中編漫画シリーズ「黒博物館」の第2作目に描かれた作品です。
「黒博物館」は、イギリスの史実や実際に起きた事件にまつわる証拠品を集めた重厚で怪しい博物館を舞台にしています。
シリーズごとに異なる来訪客が目当ての証拠品を見るために博物館を訪れ、案内役である女性の学芸員(キュレーター)に証拠品にまつわるエピソードを語るという構成です。

◆「うしおととら」の作者が描く人気ダークファンタジー


出典:藤田和日郎さん公式Xアカウント

「黒博物館 ゴーストアンドレディ」の作者は、藤田和日郎(ふじたかずひろ)先生。
藤田先生は主に「週刊少年サンデー」で活躍した漫画家で、代表作にはアニメ作品としても人気の高い「うしおととら」や「からくりサーカス」などがあります。
少年漫画だけではなく、「モーニング」や「スピリッツ」などの青年漫画雑誌では大人向けの作品も発表していて、「黒博物館」シリーズもその一つです。

藤田先生の作風は、主人公だけではなく脇役にもスポットライトを当てた濃密なストーリーと、キャラクターの目に表情が宿っていることが大きな特徴。
今回紹介する「黒博物館 ゴーストアンドレディ」も、フローレンス・ナイチンゲールの人生の裏に隠された幽霊とのラブストーリーを濃密に描いていて、医療従事者として戦場で戦うナイチンゲールの強さが彼女の大きな目によって巧みに表現されています。

「黒博物館 ゴーストアンドレディ」は2014年から2015年まで連載され、単行本は上下巻の2冊が出版されています。

◆ストーリー

ゴーストレディ
ゴーストレディ

1900年代初頭のイギリス。
ロンドン警視庁の中にある秘密の博物館「黒博物館」に、一人の男がやってきます。
彼の目当ては、1856年にドルーリー・レーン王立劇場に出る幽霊、通称・灰色の服の男が残したといわれている「かち合い弾」。
実は来訪者の男にはかち合い弾の由来を良く知る灰色の服の男本人が憑りついていたのです!
灰色の服の男ことグレイは、かち合い弾にまつわるエピソード、そして彼に「私を殺してちょうだい」と頼んできた女性、フローとの出会いを学芸員に語り始めます。

◆主な登場人物

●フロー(フローレンス・ナイチンゲール)

人生を嘆き、幽霊のグレイに自分を殺してほしいと願い出た女性。
幼い頃から人の頭上に生霊が見えていて両親や召使たちに気味悪がられている。
16歳で神のお告げを聞き、裕福な家庭に生まれながらも、令嬢として生きることより医療従事者として生きる道を志す。
クリミア戦争では身を粉にして働き、負傷した兵士たちを献身的に看病し「クリミアの天使」と呼ばれる。
まさに天使のように美しく優しい女性だが、1人でも多くの患者の命を救うために大胆かつ逞しく行動する姿は、狂気的な女傑にも見える。

●グレイ

ドルーリー・レーン王立劇場に住みついている幽霊。
「灰色の服の男」と呼ばれ、彼が出現する芝居はヒットするというジンクスがある。
芝居好きで、劇場に憑りついて芝居を見続けてきたためシェイクスピア作品などのセリフをそらんじて自身の言葉に引用する。
生前は決闘代理人として名をはせていた剣の名人。
フローに死を与え、彼女の人生の舞台の役者になるためにフローに憑りつき、彼女が絶望したときに殺すことを約束する。

●ジョン・ホール

イギリスの軍医長官で、クリミア戦争下での全陸軍野戦病院の責任者。
他人の苦しみに無関心な冷酷な性格。
フローが活躍することで自身の地位が脅かされることを恐れ、彼女を殺そうとする。

●デオン・ド・ボーモン

ホールに憑りつく女性的かつ男性的な麗人の幽霊。
生前はフランスの元竜騎兵隊長で、グレイと同じく決闘代理人をしていた。
ホールの命令によってフローの命を狙う。

●ボブ(ロバート・ロビンソン)

フローが最初に赴いたスクタリ野戦病院に入院している負傷した少年兵。
フローの手厚い看護で元気になり、以来彼女を慕って護衛している。
フローと同じように生霊や幽霊が見えて、グレイの良き話し相手になる。

■「ゴーストアンドレディ」の押さえておきたいキーワード

漫画「黒博物館 ゴーストアンドレディ」はフローとグレイの架空のラブストーリーですが、ヒロインが歴史的な偉人のフローレンス・ナイチンゲールということもあり、実在した人物や歴史的な事実が数多く登場します。
作品にまつわるいくつかのキーワードを覚えておくと、本作の世界観をより深く知ることができますよ。

◆フローレンス・ナイチンゲール

18世紀のイギリスに生まれ、近代看護の基礎を作り上げた偉大な女性。
フローレンス・ナイチンゲールは裕福な上流階級生まれの令嬢で、彼女の両親は娘を社交界デビューさせて大富豪や貴族と結婚させようと考えていました。
しかしナイチンゲールは10代の頃に病気で苦しむ人々を目の当たりにし、彼らのために看護の道に進みたいと考えるようになります。
今でこそ看護師は「白衣の天使」と呼ばれる存在ですが、当時は病原菌がまだ発見されていなかったゆえに病院を衛生的に管理するという発想がなく、不潔な環境で働く看護婦は飲酒やふしだらな振る舞いをする下品な職業だと思われていたのです。
そのため両親からは大反対を受け、人脈不足など膨大な障害も沢山あり、ナイチンゲールが本格的に看護婦として働くことができたのは30代になってからだと言われています。


出典:劇団四季公式Instagramアカウント

クリミア戦争では看護婦団の団長として戦地に趣き、夜通し患者たちを見回る姿から「ランプの淑女」と呼ばれていました。
ミュージカル版のポスターにもランプを持つフローの姿が描かれています。

今となっては病院に備わっていて当たり前のナースコールは、ナイチンゲールが患者のために考案したもの。漫画にもその描写が登場します。

◆ドルーリー・レーン王立劇場 

劇場
劇場

ロンドンの劇場街・ウエスト・エンドに実在するイギリスで最も歴史の長い劇場。
その起源は17世紀にまで遡り、現在でもミュージカルなどの演劇作品を上演しています。
幽霊が出る劇場としても世界的に有名で、グレイは実際にドルーリー・レーン王立劇場に出ると言われている18世紀の服をまとった「灰色の服の男」の幽霊がモデルです。
他にも、俳優の幽霊が出るという噂もあります。

◆決闘代理人

グレイの生前の職業である決闘代理人は、中世ヨーロッパに実在した職業です。
当時は裁判の結果を被告と原告が決闘で決める決闘裁判が制度化されていて、女性や老人、病気などを理由に代理人を立てて臨む人もいました。
決闘代理人は依頼人の遠い親戚や友人に仕立てられ、代わりに決闘を行います。

◆クリミア戦争

1853年から56年にかけてオスマン・トルコ帝国・イギリス・フランス・サルデーニャ王国の連合軍とロシアの間で起きた戦争が、クリミア戦争です。
黒海沿岸の支配権をめぐってクリミア半島で繰り広げられたこの戦争は、19世紀の世界史における1大事件でした。
オスマン・トルコ帝国とイギリス・フランス・サルデーニャの連合軍がロシアに勝って幕を閉じましたが、双方の軍の死者は75 万人にも及んだそうです。
フローレンス・ナイチンゲールはクリミア戦争下の野戦病院で看護活動に励み、兵士の死傷率を下げて「戦場の天使」と讃えられました。

◆かち合い弾

向かい合って撃ち合った銃弾が空中で衝突し、変形する現象をかち合い弾といいます。
かち合い弾が発生する確率は、なんと10億分の1なのだのか!
実際にクリミア戦争でロシア軍とフランス軍が戦った際に発生したというかち合い弾が発見されており、これが「黒博物館 ゴーストアンドレディ」の元ネタになったようです。

黒博物館が所有するかち合い弾は、1856年にドルーリーレーン王立劇場の幽霊が劇場に残していったものとされています。
実は、グレイはとある目的があってこのかち合い弾を求め黒博物館にやってきたのです。
最後にかち合い弾が誰の手に渡るのか、原作を読む時にぜひ注目してください。

◆幽霊と生霊

「黒博物館 ゴーストアンドレディ」には、幽霊と生霊という人間ではない存在が登場します。
グレイや彼の宿敵であるデボンは、この世を彷徨う幽霊。
幽霊は霊感のない人間には見えず、浮遊したり壁を通り抜けたり、生きている人間に取り憑くことが可能です。

生霊は、人間が自分以外の相手へ向ける悪意や妬みが具体化した存在として登場します。
幽霊と同じように生霊も普通の人には見えませんが、フローは子供の頃から人の頭の上に大きな恐ろしい怪物のような姿をした生霊が見えていました。

■ミュージカル「ゴースト&レディ」注目ポイント

漫画で「黒博物館 ゴーストアンドレディ」を予習すると、ミュージカル版の注目ポイントも明確になりますよ。
編集部が原作漫画を読んで気になったミュージカル「ゴースト&レディ」の見どころを3つ紹介します。

◆神出鬼没な幽霊の描き方

劇団四季:ゴースト&レディ:プロモーションVTR:2024年5月6日開幕

出典:劇団四季公式YouTubeチャンネル

メインキャラクターのグレイは、神出鬼没のゴースト。
ミュージカル「ゴースト&レディ」のポスターにも、空中をフワフワと浮遊するいかにもゴーストらしい姿が描かれていて、これは原作の漫画に登場するグレイにシルエットがそっくりです。
本作にはミステリアスなゴーストと恐ろしい生霊という非現実的なキャラクターがたくさん登場するので、彼らが舞台上でどのように表現されるのか気になりますよね・・・!

まだその全貌は明らかになっていませんが、ゴーストたちの登場シーンにはイリュージョンや特殊効果が活用されると予想しています。
ミュージカル「ゴースト&レディ」の制作スタッフの中には、イリュージョンの担当スタッフが参加しているのです。
本作のイリュージョンを監修するクリス・フィッシャーさんは、現在上演中の舞台「ハリーポッターと呪いの子」でもテクニカル・ディレクターを務めているので、魔法のような演出で漫画のイメージ通りのグレイが登場するのではないでしょうか?

◆決闘シーン

ミュージカル「ゴースト&レディ」では、決闘代理人であるグレイとデオンが実際にステージの上で決闘を繰り広げます。
これは演劇の中で役者が格闘を演じる擬闘というもの。芝居好きのグレイが喜びそうな場面ですね。
擬闘の指導と監修は、ミュージカル「バケモノの子」の擬闘も手掛けた栗原直樹さんが担当しています。
グレイ役は男性の俳優、デオン役は女性の俳優が演じるので、男女で戦う決闘シーンというのも物珍しさがありますね。
グレイとデオンはどちらも剣術に優れ数々の戦いに勝利してきた凄腕の決闘代理人なので、彼らの白熱する決闘が再現されるのが楽しみです!

◆フローとグレイの関係

劇団四季:ゴースト&レディ:ワークショップより

出典:劇団四季公式YouTubeチャンネル

演出や漫画に登場するシーンの再現度も気になりますが、やはり一番の見どころは物語の主軸となるフローとグレイのラブストーリーです。
殺されたい女と殺したいゴースト。
グレイはフローが生きる希望を失うほどの絶望に駆られたときに彼女を殺すと約束するのですが、フローはいつもそばにいてくれるグレイの存在に勇気づけられ、過酷な戦場でも屈しない強い女性へと成長していきます。
絶望どころか活力を増していくフローに、グレイも魅せられていき・・・。
原作の漫画では二人の恋について多くが描かれているわけではないのですが、セリフの掛け合いや眼差し、表情に宿る心情が物語をいっそう輝かせます。
生の舞台だからこそリアルに感じられるフローとグレイの関係の変化に注目したいですね。

■まとめ

今年の春に開幕する新しい劇団四季のオリジナルミュージカル「ゴースト&レディ」の原作漫画「黒博物館 ゴーストアンドレディ」について、ミュージカルの見どころを考察しながら紹介しました。

「黒博物館 ゴーストアンドレディ」はストーリーも作品の世界観もキャラクターも実に魅力的で、大人も楽しめる漫画です!
編集部ライターもミュージカルの予習のために読んだのですが、読み終えた後の余韻が抜けず、何度か読み直して繰り返しフローとグレイの物語を楽しんでいます。

漫画を読んで予習をするとミュージカルを一層楽しめると思いますので、ぜひ読んでみてくださいね!