日本公演30周年!ミュージカル「ミス・サイゴン」作品紹介

2022年9月11日

ミスサイゴン
ミスサイゴン
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2022年夏の東京(帝国劇場)公演を終えて、9月から全国を巡るミュージカル「ミス・サイゴン」。
ベトナム戦争を題材とした重々しい物語の中で、燃えるような恋や子供を愛する気持ちが美しい楽曲によって紡がれる世界的な名作です。

今回は、「ミス・サイゴン」の作品や2022年公演の魅力を解説していきます!

■「ミス・サイゴン」のあらすじ

◆1幕

1975年、ベトナム戦争末期のサイゴン(現ホーチミン)。
爆撃で家族と家を失った少女キムは、ナイトクラブの経営者であるエンジニアに拾われ、彼の店「ドリームランド」で働くことになります。
店ではベトナム人の女性たちがG.I(アメリカ兵)を相手にし、いつか渡米することを夢見ていました。
キムの初めてのお客は、長引く戦争で心に埋まらない寂しさを抱えたG.Iのクリス。
戸惑いながらも一夜を共にした二人は恋に落ち、互いに惹かれあいます。
永遠の愛を誓いあうキムとクリスでしたが、サイゴンの陥落はすぐそこまで迫っていました。

3年後の、1978年。
戦争が終わって社会主義国となったベトナムでは、ホーチミンで建国3周年の盛大な式典が行われています。
その裏ではキムの許嫁であるトゥイが、幼いころに親同士が決めた結婚の誓いを交わすため、彼女を捜していました。
エンジニアを利用してトゥイはキムと再会しますが、キムはクリスとの間に息子のタムを授かり、1人で育てていたのです。
逆上し、タムを殺そうとするトゥイ。
愛する我が子のため、キムは昔クリスからもらった拳銃でトゥイを殺していました。

アメリカ人とベトナム人の混血児であるタムは、アメリカ行きを夢見るエンジニアにとってはパスポートと同然。
そしてキムもまた、クリスと再会するためにアメリカに行くことを夢見ていました。
エンジニアとキムは手を結び、タムを連れて国境を越えて行きます。

◆2幕

FNS歌謡祭にキャストが出演した際の写真です)

キムを残してアメリカに帰国したクリスは、エレンという女性と結婚し、戦争によるPTSDに悩まされながらも前を向いて生きようとしていました。
しかし戦友からキムが自分との間に生まれた息子をタイ・バンコクで育てていると聞かされ、クリスはエレンと一緒にバンコクへ向かうのでした。

クリス来訪の知らせは、バンコクのキャバレーで働くエンジニアとキムの耳にも届きます。
再会に心躍らせ、キムはクリスが宿泊するホテルの客室に向かいますが、そこにいたのはエレンでした。
クリスが結婚したことを知らずに打ちのめされるキム。
「せめてタムを養子としてアメリカで育ててほしい」と懇願しますが、エレンに断られてしまいます。
キムが部屋を飛び出した後、それぞれの新しい生活のために、キムとタムへ援助することが一番の解決策だと結論を出したクリス夫妻。
しかし、キムは直接クリスと再会するまでに”ある決心”を固めるのでした。

■「ミス・サイゴン」の主な登場人物

ミスサイゴン出演者
ミスサイゴン出演者

◆エンジニア

キャバレー「ドリームランド」を経営するフランス系ベトナム人。
アメリカでの一獲千金を夢見ており、G.I.とのコネを作って渡米を企む。
エンジニアとはニックネームで、「世渡り上手」の意味。

2022年公演キャスト(敬称略):市村正親、駒田一、伊礼彼方、東山義久

◆キム

戦争孤児ながらもまっすぐで清らかな心を持つ主人公の少女。
17歳で故郷と家族を失い、たどり着いた街でエンジニアに拾われ、キャバレー「ドリームランド」で働く。
G.Iのクリスと恋に落ち、惹かれあう。
彼が帰国した後も再会を夢見て、彼との間に設けた息子のタムを育てている。

2022年公演キャスト(敬称略):高畑充希、昆夏美、屋比久知奈

◆クリス

ベトナム戦争に出兵したアメリカ軍の兵士。
従軍後に一度帰国したが、国のために戦ったにもかかわらず周りから白い目で見られるのに耐えられなくなり、サイゴンに戻って大使館の運転手として勤める。
戦争による虚無感に苦しめられているときにキムと出会い、恋に落ちる。

2022年公演キャスト(敬称略):小野田龍之介、海宝直人、チョ・サンウン

◆タム

キムとクリスの一人息子。
3歳なのでまだ幼く、話すことはできない。
アメリカ兵と現地のベトナム人の間に生まれたタムのような混血児は「ブイドイ」と呼ばれ、ベトナム戦争後に支援の手が差し伸べられる一方、差別の対象ともされてきた。

2022年公演キャスト(敬称略):上原琴葉、鎌田久遠、藤元萬瑠、前田桜来来

◆エレン

アメリカに帰国したクリスと結婚したアメリカ人の女性。
戦争による悪夢でうなされるクリスを支えつつ、彼の苦しみの根本に立ち入ることができずに悩んでいる。

2022年公演キャスト(敬称略):知念里奈、仙名彩世、松原凛子

◆トゥイ

キムの従妹であり、幼いころに約束された許嫁。ベトナム人。
敵であるはずのベトコン(南ベトナムで結成された反米・反サイゴン・反対国主義を掲げる統一組織)に寝返り、キムの反感を買う。
サイゴン陥落後は人民委員長となり、執拗にキムを追い続ける。

2022年公演キャスト(敬称略):神田恭兵、西川大貴

◆ジョン

クリスの戦友であり上官のアメリカ軍兵士。
クリスを元気づけようと、「ドリームランド」で新入りのキムを彼にプレゼントする。
終戦後は、アメリカ・アトランタでブイドイを救済する支援団体を設立する。

2022年公演キャスト(敬称略):上原理生、上野哲也

◆ジジ

「ドリームランド」で働くベトナム人の少女。
キャバレーの中で一番美しいミス・サイゴンに選ばれるが、クリスと結ばれたキムを祝福し、彼女こそ本当のミス・サイゴンだと語る。

2022年公演キャスト(敬称略):青山郁代、則松亜海

■【魅力①】戦禍のリアルさが頭から離れない

「ミス・サイゴン」は1960年代から1970代に起こったベトナム戦争を題材に、オペラ「蝶々夫人」の物語をベースにして作られたミュージカルだと言われています。

制作したのは、ミュージカル「レ・ミゼラブル」のクリエイティブチーム。
彼らがベトナム戦争で引き裂かれる母娘が写った1枚の写真を見たことをきっかけに、「ミス・サイゴン」の物語が生まれたのです。

ベトナム戦争はテレビが初めて戦地の様子を映した戦争と言われています。
1975年のサイゴン陥落では、南ベトナムから脱出する兵士や市民を乗せたヘリコプターが飛来し、乗り切れなかった人々が外に押し寄せる混乱の様子が報道されました。
「ミス・サイゴン」のなかでも、そのシーンはリアルに描かれています。
実物大のヘリコプターが轟音を立てて人々の上空を飛ぶ様子は余りにもリアルで、こんなにも恐ろしい混沌が現実にあったのだと思うとゾッとするほどです。

虚しさや不実が漂う戦禍のベトナムで、確かな愛情をはぐくんだキムとクリス。
「サン・アンド・ムーン」や「世界が終わる夜のように」など、2人のデュエットナンバーは暗いサイゴンの夜に美しく光り輝きます。

2人の愛はさまざまな困難に阻まれてしまうのですが、鑑賞していると「もしあの人があのときにこうしていたら」とたくさんの”IF”を考えずにはいられません。
しかしどんなにたくさん考察を重ねても、舞台上で観たベトナム戦争の生々しさが頭から離れず、最終的には「戦争さえなければ」という考えに行きついてしまうのです。

■【魅力②】2022年は日本公演30周年

当初「ミス・サイゴン」は2020年に上演される予定でしたが、新型コロナウイルスの流行により、全後年中止を余儀なくされました。
ようやく2022年に公演が実施されているのですが、何と今年は「ミス・サイゴン」日本公演30周年の記念すべき年!

1992年の初演からこれまでに、本田美奈子さん、松たか子さん、井上芳雄さん、山崎育三郎さんなど、多くの有名俳優たちが「ミス・サイゴン」の舞台を踏んできました。
その中でもレジェンドといえば、初演から今回の2022年まですべてのカンパニーでエンジニア役を演じている市村正親さんです。

市村さんの胡散臭いけれどどこか茶目っ気がある独特のエンジニアは、もはや日本版「ミス・サイゴン」の名物になっているのではないでしょうか?

2022年8月22日には日本初演30周年と累計上演回数15,000回達成を記念した特別なカーテンコールが行われ、市村さんが挨拶をし、劇中歌の「アメリカン・ドリーム」を披露しました。

Miss Saigon 日本初演30周年&累計上演回数1,500回達成記念カーテンコール!

■今後の公演予定

ミスサイゴン公演予定
ミスサイゴン公演予定

「ミス・サイゴン」は、2022年9月9日から11月13日まで、以下の日程で全国公演を予定しています。

【大阪】9月9日(金)~19日(月)/梅田芸術劇場メインホール

【愛知】9月23日(金)~26日(月)/愛知県芸術劇場大ホール

【長野】9月30日(金)~10月2日(日)/まつもと市民芸術館

【北海道】10月7日(金)~10日(月)/札幌文化芸術劇場 hitaru

【富山】10月15日(土)~17日(月)/オーバード・ホール

【福岡】10月21日(金)~31日(月)/博多座

【静岡】11月4日~6日(日)/アクトシティ浜松大ホール

【埼玉】11月11日(金)~13日(日)/ウェスタ川越大ホール

■まとめ

現在公演中のミュージカル「ミス・サイゴン」の作品や魅力を紹介しました。

今年は日本版「ミス・サイゴン」にとって、記念すべき節目の年。
お見逃しのないように、ぜひ劇場へ足を運んでみてはいかがでしょうか?

ハピエル編集部は、2022年「ミス・サイゴン」カンパニーの全国公演完走を心から願っています!