色褪せない名作!ミュージカル「レ・ミゼラブル」あらすじと魅力を紹介
ミュージカル「レ・ミゼラブル」といえば、誰もが1度はその題名を聞いたことがあるであろう世界的な名作。
フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーが自身の人生体験を元に書いた大河小説を基にしている壮大なミュージカルで、現代でも多くの人に愛され、「キャッツ」と「オペラ座の怪人」に並ぶ世界3大ミュージカルの1つと言われています。
日本でもファンが多いレミゼが、今年の年末から帝国劇場で上演決定!
今回は公演に先駆けて、「レ・ミゼラブル」のあらすじと登場人物、作品の魅力を詳しく解説します。
※画像出典 帝国劇場公式ホームページ
■「レ・ミゼラブル」あらすじ
◆1幕
出典:東宝演劇公式YouTubeチャンネル
1815年、フランス南東部にあるトゥーロンの刑務所で、ジャベール警部によって1人の囚人が仮釈放されます。
彼の名前はジャン・バルジャン。パンを1度盗んだだけで19年投獄された彼はすっかり心が荒み、自分を助けてくれた司教を裏切って再び盗みを働きます。
ところが司教はバルジャンを牢獄に戻すどころか彼が盗んだ銀の食器を与え、正しい生き方を諭してくれました。
これを機に、バルジャンは過去の自分を捨てて新たな人生を歩み始めます。
出典:東宝演劇公式YouTubeチャンネル
1823年、バルジャンはマドレーヌと名前を変え、市長の職に就いていました。
彼が所有する工場では、ファンテーヌという女性が工場長に解雇されてしまいます。
離れて暮らす娘のコゼットのため、お金に困ったファンテーヌは娼婦となり、身も心もボロボロに。客と騒ぎを起こしたとき、通りがかったマドレーヌ市長が彼女を助けました。
そんな市長の姿を不審に思っていたのが、ジャベール警部です。
弱き者にも優しく手を差し伸べる市長にバルジャンの面影を見たジャベールは、市長に「バルジャンという男が脱獄の罪で捕らわれ、明日法廷で裁かれる」と話します。
そのバルジャンは別人。本物のバルジャンは悩んだ末に、捉えられた男の無実を証明するために出廷しました。
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
再びジャベールに追われる身となったバルジャンですが、病に伏したファンテーヌの元に駆けつけ、息を引き取る彼女からコゼットを託されます。
バルジャンはその約束を果たすべく、宿屋でコゼットを下女として働かせているテナルディエ夫妻から彼女を引き取り、養子に迎えました。
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
時代は流れ、10年後のパリ。
混乱する社会を変えようと、アンジョルラス、マリウスら学生たちが革命を志しています。
マリウスは、街で出会った美しい娘に一目ぼれ。その娘は、父親のバルジャンと共に街で施しをしていたコゼットでした。
テナルディエ夫妻は娘のエポニーヌと共に街で悪事を働いており、エポニーヌは想い人のマリウスから、コゼットの居場所を探してほしいと頼まれます。
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
学生たちが民衆と共に蜂起するときはもうすぐ。
エポニーヌにコゼットの居場所を案内してもらったマリウスは、コゼットと互いの愛情を確かめ合います。
そこへテナルディエが現れコゼット達親子の屋敷を襲おうとしますが、エポニーヌが機転を利かせて未遂に終わりました。
この騒ぎを機に、コゼットを連れて国外へ逃げようとするバルジャン。
そして騒ぎを聞きつけ、バルジャンを逮捕しようと心に誓うジャベール。
それぞれの思いが交錯し、新しい明日がやってきます。
◆2幕
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
革命の動きが本格化し、それを鎮圧しようとするジャベールは、味方のふりをして学生たちに加わります。
コゼットへの手紙をエポニーヌへ託すマリウス。
手紙を受け取ったバルジャンは革命のバリケードに娘の愛する人がいることを知り、エポニーヌはマリウスへの叶わぬ恋心に涙します。
いよいよバリケードが完成。
学生たちに嘘の情報を流すジャベールですが、勇敢な少年ガブローシュに正体を見破られ、捕虜になってしまいました。
ついに争いが勃発し、最初の犠牲者となったのはエポニーヌです。
彼女はマリウスを庇って銃弾に倒れ、マリウスの腕の中で息を引き取りました。
コゼットの恋人を探しにバリケードへ加わるバルジャン。
敵の狙撃を防いだバルジャンは学生たちに認められ、捕らわれていたジャベールの処分を任されますが、彼は宿敵であるジャベールを殺さずに逃がします。
そして学生達の中にマリウスを見つけ、彼の無事を祈るのでした。
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
夜が明けて、軍の攻撃が始まります。
援軍が来なかったこと、前夜の雨で弾が湿ったことで、学生たちの戦況は不利なものとなりました。
ガブローシュ、アンジョルラスら、若者たちが次々と命を落とします。
果たしてバルジャンはマリウスを革命から守り、そしてコゼットの元へ帰れるのでしょうか?
そして宿敵に命を助けられたジャベールは、罪人であるバルジャンを逮捕すると誓った自身の正義を全うできるのでしょうか?
■「レ・ミゼラブル」の主な登場人物
◆ジャン・バルジャン
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
姉の子供たちを飢えから救うためにパンを盗み、19年という長い年月を監獄で過ごした元囚人。
並外れた怪力の持ち主で、その力は徒刑場でも知れ渡っていた。
長い監獄生活で人間社会への憎悪を募らせていたが、心優しき司教に出会い、過去を捨てて正しい人生を歩むと決意する。
囚人番号は、日本語版では24653。
英語版では24601で、上演する国の言語で歌いやすいように改変されている。
◆ジャベール
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
法と神こそが全てだと考えている厳格な警部。
脱獄囚はあるバルジャンを追い、彼を捉えて法の下で捌くことに信念を燃やす。
両親は囚人で、刑務所で生まれた。
◆ファンテーヌ
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
知人に預けている娘のコゼットの養育費のため、マドレーヌ市長が所有する工場で働く美しい女性。
コゼットの父親は若い頃にファンテーヌの元を去り、帰ってこなかった。
愛する娘のためにお金に困窮するあまり、自慢の美しい髪や歯、そして身体まで売ってしまう。
◆コゼット
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
ファンテーヌの娘で、ミュージカルのポスターのモデルになっているキャラクター。
少女の頃はテナルディエ夫妻の宿屋で下働きさせられていた。
バルジャンに引き取られてからは穏やかに暮らし、美しい娘に成長する。
バルジャンの素性は知らないものの、彼を実の父のように心から愛している。
◆マリウス
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
学生たちの革命に加わる青年。
実家のポンメルシー系は貴族であり家柄は良いが、革命に加担したため家族から縁を切ると言われている。
街中で出会ったコゼットに恋をする。
◆エポニーヌ
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
テナルディエ夫妻の娘。
コゼットとは幼少期を共に過ごしていた。
マリウスに片思いしており、叶わぬ恋心を抱きながらも彼がコゼットと再会できるように手伝う。
◆テナルディエ夫妻
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
パリ郊外のモンフェルメイユで宿屋を営む夫婦。
ファンテーヌが幼いコゼットを預かり、虐待同然の扱いをして下働きさせている。
宿屋の経営でお金に苦しんでいるものの真面目に働く気はなく、他人からお金をむしり取ることばかり考えている。
宿屋が破産してからはパリのボロ家に移り住み、悪事を働く。
◆アンジョルラス
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
学生達の集まり「ABCの友」のリーダーで、格差社会を変えようと情熱を燃やす青年。
信奉していたラ・マルク将軍が亡くなり、学生達に蜂起しようと呼びかける。
マリウスにとって兄のような存在。
◆ガブローシュ
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
パリの貧民街で盗みを働きながら暮らす少年。
子供ながらも青年達の革命に参加し、勇敢に戦う。
■【魅力①】現代人にも刺さるストーリー
出典:東宝演劇公式YouTubeチャンネル
「レ・ミゼラブル」は、19世紀初頭のフランスに起こった社会の動乱と人々の生活を描いた作品。
題材が難しそうですが、現代の私達から見ても共感できるポイントが多いことが、本作が長く愛されている要因の1つです。
群像劇なので、主人公のジャン・バルジャンだけではなく様々な登場人物に焦点が当たります。
キャラクター全員にドラマがあり、そこには貧富による格差社会、叶わない恋、立場の弱い者が心身を削らねばならない労働環境といった、現代人でも考えさせられる人生の困難が描かれているのです。
自由を求めて革命に燃え、愛する人を守ろうと闘う登場人物達のストーリーは、明日へ向かう私たちの心を奮い立たせてくれます。
■【魅力②】登場人物たちの対比と音楽に注目
出典:「レ・ミゼラブル」イギリス公演公式Instagramアカウント
魅力的なキャラクターが多い「レ・ミゼラブル」は、登場人物同士の対比も注目したいポイントです。
物語の中心となるのは、ジャン・バルジャンとジャベール。
不条理な投獄生活で世の中を憎んでいたバルジャンは、最初に優しさを与えてくれた司教、そしてコゼットと出会ったことで、次第に人を慈しむ優しい男に変化します。
バルジャンを追いかけるジャベールは、自分の信念を変えることはありません。
彼がソロナンバーの「星よ」で歌うように、星が規律正しく夜空を守るような不変的な世界が、彼にとっての正義なのです。
対照的なバルジャンとジャベールですが、2人が同じメロディで歌う曲があります。
バルジャンは1幕の「独白」、ジャベールは2幕の「自殺」。
どちらもこれまで人生の糧にしていたものが崩れ、未知の価値観に出会ったときに歌われる曲です。
出典:東宝演劇公式YouTubeチャンネル
マリウスに恋をする2人の女性、コゼットとエポニーヌも対照的なキャラクターです。
コゼットは想いが通じ合う喜び、エポニーヌは想いが届かない孤独を歌います。
エポニーヌが歌う「オン・マイ・オウン」は、「民衆の歌」や「夢破れて」に並ぶ人気のナンバー。
「レ・ミゼラブル」には同じ旋律の曲を別々の登場人物が歌う場面が多いのですが、「オン・マイ・オウン」は劇中で何度か登場するので、ぜひ意識して聴いてみてください。
■【魅力③】現・帝劇ラストのミュージカル公演
出典:東宝演劇公式YouTubeチャンネル
ミュージカル「レ・ミゼラブル」が世界で初めて上演されたのは、1985年。
日本ではその2年後の1987年に帝国劇場で初上演され、以降帝劇の看板作品となり、2021年の全国ツアー公演では上演回数3,459回という東宝演劇史上最多記録を達成しました。
そして2024年12月から2025年にかけて、約3年ぶりに「レ・ミゼラブル」が上演されます!
2025年2月に一時閉館となる現・帝国劇場のクロージングラインナップの最後のミュージカル作品として上演された後は、全国各地を巡演する予定です。
詳しい公演スケジュールとキャストについては、2024年5月現在では未発表。
特にキャストについては全役のオーディションが開催されているとのことで、誰がキャスティングされるのか、演劇・ミュージカルファンの注目を浴びています。
詳細の発表が待ち遠しいですね!
■まとめ
ミュージカル「レ・ミゼラブル」がどのような物語の作品なのか、登場人物や作品の魅力を踏まえながら紹介しました。
ヒュー・ジャックマンが主演した2012年公開の映画版を観たことがあるという人も多いと思うので、ぜひ映画で味わった感動を生の舞台でも体験してはいかがでしょうか?
現代人から見ても考えさせられるフランス革命の群像劇、そして登場人物の心情とシンクロする美しい音楽に、きっと胸を打たれることでしょう。
劇場で観るときには、ハンカチをお忘れなく!